第四幕第一場(6)

 拍手は鳴り止んでいなかったが、指揮者は次への曲のタクトを振った。
 軽快で楽しいその曲を全団員が演奏していた。つまりこのオペレッタがフィナーレに近づいている事を表していた。そしてそれを象徴するように、赤ハリ先生以外の出演者が次々と舞台袖から現れて、舞台中央で抱擁している二人の周りに集まってきた。
【イルカさん】
 信代、信田さんおめでとう。
【神杉静江】
 お二人とも、おめでとうございます。
【タア子】
 よかったね、ノブチン。本当におめでとう。
【イルカさん】おめでとう。【神杉静江】おめでとう。【タア子】おめでとう。
【ノブチン】
 ありがとう。
【イルカさん】おめでとう。【神杉静江】おめでとう。【タア子】おめでとう。
【ノブタ】ありがとう。ダンケ!
【イルカさん】どうぞお幸せに。【神杉静江】どうぞお幸せに。【タア子】どうぞお幸せに。
【ノブチン】 
 うん、ありがとう。幸せになります。
【イルカさん】どうぞお幸せに。【神杉静江】どうぞお幸せに。【タア子】どうぞお幸せに。
【ノブタ】
 おう、ダンケ!ノブチンをきっと幸せにします。ところで・・・
♫♫♫
 一旦、オーケストラの響きが鳴り止んだ。
 そして静かな弦楽合奏の中で、ゆったりとしたコミカルなオーボエのソロが始まった。
 すぐにノブタのテナーの声と色々な声がオーボエの音に重なった。
【ノブタ】
 ところで、先生はどこへ?
【イルカさん】先生は?【神杉静江】先生は?
【タア子】ブラマンは?
【ノブチン】そうよ、先生はどこへ行かれたの?
【イルカさん】どこへ?【神杉静江】どちらへ?
【タア子】ブラマンは?
 舞台袖から声がした。
「ここで〜す。先生はここですよ〜。」