第四幕第一場(5)

【ノブタ】
 この前『赤ハリ通信』で、俺は君の童話を読んだんだ。君の童話に感激した。そして山多君が言った(ハリネズミの葛藤)を思い出したのだ。俺は自分が傷つくのが怖くて、君に俺の気持ちを伝えられずにいた。それは君が先生の親友を愛していた事を知っていたから。俺は到底、先生の親友の代わりにはなれない。俺はドブねずみのように死んでしまいそうだった。そんな時、神杉さんから連絡があった。彼女は自信満々に「自分に任せなさい。」と言ったのだ。すると不思議な事に俺の周りにもノブチンの周りにも、ビーナスが使わしたキューピットがグルグルと廻り出したのだ。
♫♫♫
 そこへノブチンが現れる。そして信田の許へ走り寄って抱きついた。
 オーケストラが鳴り響く中、二人の二重唱が始まった。
【ノブチン】
 こんな近くに愛おしい人がいたなんて。
【ノブタ】
 こんな近くで愛おしい人と結婚できるなんて。
【ノブチン】
 こんな近くで愛おしい人がいたなんて。
【ノブタ】
 こんな近くで愛おしい人と結婚できるなんて。
【ノブチン】
 あなたを一生幸せにします。
【ノブタ】
 君を一生幸せにします。
♫♫♫
 オーケストラが最高潮の中で二人は何度も抱擁し、二重唱が終わった。
 同時に会場から一斉に拍手が起こり、しばらくは鳴り止む事はなかった。
 ノブチンとノブタは礼をしないで抱擁したまま静止していた。