第三幕第一場 第七夜(9)

「でも山多君の大学オーケストラはロマン派の交響曲の良くしてるじゃない。著作権は掛かららないのではないのではないの?」
ノブチンが外れかけた話題を軌道に戻しえくれた。
「はい、勿論ロマン派の曲には掛かりませんが、プログラムの半分は親しみのある映画やドラマの曲という伝統があって、それらの曲に掛かるのです。結構な額です。」
「結構な額ってどのくらい掛かるのよ?」
そう訊いたのはタメ池だったが、みんなも興味津津だった。
 オロチは考えながら言葉を選びながらゆっくりと話した。
「僕の記憶ではオケの演奏会で使用する曲は、5分単位になっていて入場料の値段設定や観客数によって違うのですが、私の大学オケは入場料が1000円で観客が1500人位集まるので一曲が600円位だったと記憶しています。で一公演だいたい10曲程度はします。」
「ふ〜ん、結構取られるんだね。10曲で6000円かあ。やっぱり入場無料にするべきだよう。」タメ池がそう言うと、オロチは、
「入場無料にしても著作権料はタダにはならないと聞いたよ。」と答えた。
 それを補足、解説したのはノブタだった。しかもその口調は滑らかだった。
「同じ条件で入場無料にしても一曲600円だね。だから合計6000円で変わらないんだよ。」
 著作権料まで知っているノブタの言葉に、みんなが唖然として聞いているとノブタは、
「俺、一応弁護士だよ。尤も著作権協会も著作権協会から訴えられた側も弁護した事があるからね。」と言った。そしてノブタが真剣な顔をしてしみじみと言った。
「しかたないよなあ、著作物を守るた為だもの。法で権利を守ってやらなきゃなあ。」
(ノブタ、珍しく弁護士みたいな事を言っている。)