第三幕第一場 第七夜(6)
その時だった。カランとお店のドアが開くと、恐縮そうに男が顔を出し、ニヤけた笑顔でみんなに会釈をした。山多君すなわちオロチだった。
そのオロチに真っ先に声を掛けたのは、やはりタア子だった。
「オロチ、肩大丈夫なの?肩が痛いから今晩は来ない、って言ってたじゃない。」
すると神杉静江さんが優しくオロチに言った。
「丁度よかったわ。あなた肩はもういいの?多賀子さんから伺ったわよ。明日にでも主人の整形外科病院にいらっしゃい。どうぞ、こちらにきて打ち合わせしましょう。」
親切に声を掛けてもらったにもかかわらず、オロチはドアから顔だけ見せた状態から入ってこようとしない。
「オロチ君、どうしたの?」今度はノブチンが優しく訊いた。
すると突然にドアが全開になり、オロチではない顔が仁王立ちして、
「ジャ〜ン。こんばんわ。」と言って、ズカズカと中へ入ってきた。
池野響だった。
(もう一人、タメ口女の登場だわ・・・)
タメ口の先輩、タア子はきつい口調で、
「どうしてあんたがオロチといるのよう。」
と訊いた。
それに答えたのはオロチだった。
「実は僕、池野さんの家庭教師をしているのです。」
「そうなんで〜す。」タメ池が横から口を出した。