第二幕第三場(5)

『ブラマンお疲れ〜!
 面白い問題だったよ。さっすがブラマンだね!みんなの思考をブラームスに意識させようとしているのがミエミエだね。うちはダマされないよ。
 (???)
 赤ハリはブラームスが好きだから、今のワンちゃんの名前がヨハネスだと、みんなは思い込んでいる。いいですか、赤ハリはバッハも好きなのです。バッハの有名な名曲にヨハネ受難曲があるのを知っていますよね?そのドイツ語読みがヨハネスなのですよ。だったらもう答えはわかりましたね?そうで〜す。バッハのもう一つの受難曲、マタイがあるではないですか。ドイツ語読みでマティアス、それが正解で〜す。うちって天才?』
 勿論不正解だが・・・タメ池の頭の単純ではない構造に、私は少しだけ感心してしまった。
 その晩の最後に返信があったのは豚マークだった。
『(長い長い前文は全て省略)
 先生の犬の名前はクララの三女であるユーリアではないですか?ヨハネス・ブラームスクララ・シューマンの三女ユーリアに恋心を抱きます。クララは知らない。あるいは薄々気づいていながらユーリアを別の男と結婚させてしまうのです。ブラームス35歳の時の失恋だった。俺は先生の犬達だけでもブラームスの恋愛を成就させてあげたいと思います。先生が部屋の暖炉の前でブランデーを片手に呼ぶのです。「ヨハネスおいで。ユーリアおいで。」いい光景だと思いませんか?』(赤ハリ先生の家に暖炉があったかしら?)
 翌朝、私がメールを開いてみるとイルカさんから届いていた。どうやら深夜遅くに返信してくれていたようだ。主婦も大変なんだなあと私は思った。
『前略、ワンちゃんの件です。
 正解とは違うと思うのですが、イーゲルが面白いなと思ってしまいました。イーゲルとは(赤いはりねずみ)のドイツ語(ローテン・イーゲル)のイーゲル(はりねずみ)です。同じ大型犬種だという話ですが、いっそうもう一匹は小型犬を飼ってはいかがでしょうか?できれば(はりねずみ)のようなロングコート・チワワがいいかと思います。できればその子の毛を赤く染めてみてはどうでしょう。きっと楽しいですよ。有名な影絵があるではないですか。ブラームスが葉巻を咥え歩いていて、その前を赤いはりねずみが歩いている絵が。ブラームスのような風貌の先生の大型犬、ヨハネスの前をチワワ(イーゲル)が歩いているのです。きっと街の人気者になりお店の宣伝にもなりますよ。』
(あのねえ、同じ大型犬種だって言ってるでしょう。イルカさんって意外にO型?)