第二幕第三場(4)

 最初にドア・マークの返信メールがあった。ノブチンからだった。
『(前文省略)
 ところでワンちゃんの名前だけど当然アガーテでしょう?フラームスが人生で唯一婚約した恋人でありながら一年で破棄されたアガーテ・フォン・シーボルトを赤ハリ先生の弟子であるみなさんは当然ご存じでしょう。彼女が婚約破棄したのはブラームスを嫌いになったからではなく、自分との結婚がブラームスの創作活動の障害になってしまうと思って身を引いたのよ。だからアガーテは他の人と結婚してしまったけど、本当はブラームスを愛し続けた筈よ。』
 続いて、とぐろを巻いた蛇のマークのメールが入った。オロチだ。
『(前文省略)
 ヨハネスの次とはヨハネスが亡くなってからですか?それともヨハネスが存命中に二代目を飼われるのですか?もし後者であるならば僕は、当時ブラームスと音楽界を二分した好敵手ワーグナーファーストネーム、リヒャルトがいいと思うしそうするべきだと思います。先生が二匹を連れて散歩をさせながらこう呼ぶのです。「来い!ヨハネス、リヒャルト」かっこいいではないですか。クラシックファンなら絶対に振り向きます。そうです。絶対にそうするべきです。』
 あのなあ〜、オロチは次のワンちゃんはメスだとわかっているのだろうか?それにあんなでっかい犬を二匹連れていればクラシックファンでなくても振り向くぞ。
 すぐに別のメールが返ってきた。開いていきなりイラッとさせられた。