第二幕第三場(2)

 その三日後、今度は私がみんなに『赤ハリ通信』のメールを送った。
『今日、赤ハリ先生と安藤多賀子さんと一緒に買い出しができそうなお店をまわってきました。
 多賀子さんが事前に、先生宅からお店までの間に点在するスーパー、量販店、商店街を調べてきてくれたので、私達は要領よくいろいろなお店に行く事ができました。デパ地下の食材売り場しか知らない赤ハリ先生はカルチャーショックだったようです。
 一パック100円もしない玉子、50円の特売の大根や30円の豆腐を見ては驚いていました。中国産ニンニクが一〇個入って150円のネットを手にした先生は茫然自失状態でした。
 その後お店に行って赤ハリ先生とお店に行ってよく話し合いました。タア子の助言が一番的を射ていました。結局赤ハリ先生のお店(赤いはりねずみ)は、高級なお店ではなく、赤ハリ先生が作りたい食べ物をできるだけ安く提供できるように、買い出しも含めて自分で安く仕入れていくという事になりました。私自身も多賀子さんと一緒に視察に行って、本当に有意義な一日になりました。
 みなさま、これからも続けてご協力をお願いします。
 さて、突然ですがここで問題です。
 赤ハリ先生の所のワンちゃんの名前がヨハネスというのはみなさん知っていましたか?先生は次も同じ大型犬種のメスが欲しいと言っていました。名前も決めているそうです。
 ではその名前は何でしょうか?暇な時に考えてみてくださいね』
 私はみんなが楽しく『赤ハリ通信』を読んでくれるように、遊び心で問題を提出した。そしてその作戦は大成功だった。その日の晩から次の日までには全員から回答があった。
 私が赤ハリ先生からワンちゃんの名前を聞いた時、先生は意外にも単純な思考回路をお持ちなんだと思った。だから赤ハリ・プロジェクトのみんなも、ワンちゃんの名前はすぐわかるのだろうと思っていた。ところがどうしてどうして、みんなの豊かな知識と発想に、むしろ私の方が逆に驚愕してしまった。侮る事なかれ、赤ハリ先生の愉快なお弟子さん達!