第二幕第二場（２０）

『業務用食品取扱商社』
　　女性が多い『赤ハリプロジェクト』で、そのカタ　ログは見事に壺にはまった。それも当然だ。その分　厚いカタログには高級レストラン等にあるような垂　涎のメニューのオン・パレードだったのだ。フレン　チの三大食材『フォアグラ』『トリュフ』『カスピ　海産チョウザメのキャビア』からイタリアンの『白　トリュフ』『ポルチーニ茸』『カラスミ』、中華の　食材『海燕の巣』『干しアワビ』『干しナマコ』
　『フカヒレ』、更に日本の食材『エゾバフンウニ』　『高級からすみ』から高級レストラン使用のポター　ジュやコンソメスープ、フォン・ド・ボー等、それ　に神戸牛や飛騨牛や薩摩の黒豚、名古屋コーチン等　の高級食肉からブラジル産の鶏肉やハンガリー産の　合鴨等の安価な外国産食肉まで、枚挙に暇がない位　の食材がみんなの興味をそそった。
　　そうなると話が脱線するなんてレベルではない。　脱線した方向に新たに幹線を敷いたようなものだ。
　みんなの話はすっかりその幹線に乗っかって行って　しまった。それはもう赤ハリプロジェクト一番の盛　り上がりだった。その幹線に乗りそこなったノブタ　とオロチの男二人が脱線したままの車両の中でボソ
　ボソと何やら話をしていた。どうせ真面目に音楽の　話等しているのだろう。その様子を横目に見ながら
　私は、オロチもノブタのように独身街道まっしぐら
　なんだろうな、と失礼ながら思った。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その間、赤ハリ先生は調理場で何やら作業をしていたらしい。（つまり誰もその間、赤ハリ先生なんて見　ていなかったのだ。）みんなにデザートとして手作りのチーズケーキを出してくれた。その瞬間は、みんなワ〜と歓声を上げたが、すぐに幹線に乗って騒々しく行ってしまった。
　赤ハリ先生は一人寂しくコーヒーを入れ始めた。赤ハリ先生は幹線なんか乗らないで、在来線をのんびりと暢気に行く方がきっと好きなのだろう・・・な。
（第二幕第二場　開店準備　　終わり）
　＃２月６日より第二幕第三場を始めます。