第二幕第二場(19)

『有線BGM』
  赤ハリ先生がカタログをみんなに見せながら、  「クラシックだけでもいろいろなチャンネルがある のですよ。」という前向きな発言をした。
  それを聞いたオロチが、
 「仮にクラシックが店内に流れると、先生はこの演 奏者は誰なのか気になって仕事に集中できなくなる のではないですか?ましてや知らない曲が流れた日 には寝られなくなるのではないですか?」と言っ  た。その言葉にみんなは拍手喝采だった。発表会の 演奏後でもそんな拍手をもらえなかったオロチは照 れながら、
 「とりあえず、しばらくは先生が持っているCD、 しかもジャズなんかを流しておけばいいのではない ですか?」と言い、これにみんなが賛同して半ば強 引に決まった。
『広告』
  当然のように赤ハリ先生は、「広告はどのように  載せようか考えているのですよ。」と言った。
  それに対してノブタが、広告費は案外バカになら ない程経費が掛かる事を告げると、話はできるだけ 安く効果的に宣伝できるミニコミ誌に載せたらどう かという方向に流れていたその時だった。タア子が それまでの話が全く無駄になるような辛辣な発言を した。
 「もしもだよ、宣伝の効果があって客が一斉にたく さん来られたら、赤ハリは上手く対応できるの?も し最初の対応がまずかったら客は二度と店に来ない よ。そのへん大丈夫なの?」
  タア子の意見に私も同調した。
 「そうよねえ、赤ハリ先生は初めてお店をするのだ から、無理をして集客を考えなくて、少しずつ慣れ ていってから宣伝方法を考えてみたら?」
  みんなも私の意見に賛成した。
『提灯』
  赤ハリ先生が、提灯のカタログを出してみんなに 見せた。たかが提灯とはいえその種類の多さは半端 ではなかった。所謂『赤ちょうちん』だけでも大小 いろいろあり、同じ大きさの提灯でもいろいろな文 字があった。『おでん』『酒』『やきとり』等な  ど、これにはみんな感心しきりで、カタログ一冊で 大いに盛り上がった。その挙句話が脱線したまま、 次の話題に移ったのだった。
  それには理由があった。カタログを前にしたみん なのあまりの盛り上がりに、赤ハリ先生が別のカタ ログを出したからだ。それは業務用食品を取り扱う
 商社の分厚いカタログだった。