第一幕第四場(11)

『でもおかしいではありませんか。」私はノブタに言った。「だってノブタさんは、その事がわかっているのに何故そんなお店に女性を連れて来たのですか?」
 ノブタは私の言葉に明らかに動揺していた。
「いや、そ・・・それは・・・あの〜ブラマンさん、これには大きな理由があるんだ。俺の会社ではお付き合いに、つまり接待で女性のいる店を使っているので懇意にしておくべき女性が必要なんだ。でも売れっ娘は高級料亭や高級な寿司屋へ連れて行こうとするだろう。すると二人だけでも軽く2万円以上は使うし、店の娘達にお土産を、なんて言われると3万円以上はかかってしまう。それから女性と一緒に店に行くので、そこの飲み代も当然要る事になる。しかもお土産を貰った女達がお礼を言いに俺の席に来て飲んでいくので、相当なお金がぶっ飛んでしまうんだ。それに比べれば、まあまあの女にマズイ店へ連れて行かれてたって、飲んで食べてもせいぜい1万円程度だろ。俺は会社の接待を円滑にする為にあの女と『万吉』へ行ったのです。どうか信じてください。」(何故最後だけ丁寧語なのよ・・・)
「わかりました、と言いたい所だけど、ノブタさん。そのバックマージンで、いくら位の現金が同伴の女性に手渡されるのですか?それから、私・・・ノブタさんからブラマンと呼ばれる筋合いはありません!」(まあもっとも私も野豚さんと言う筋合いはないのだが・・・)
「すみません・・・」野豚いや信田はすっかり意気消沈してしまった。