第一幕第四場(9)

 次のお店はおでん専門の屋台だった。というのが、赤ハリがおでんは自分のお店で是非とも出したいと言ったので、私がおでんの人気店を検索して吟味して決めた所だった。
 先のタア子の話ではないが、おでんも奥が深い。人気店を検索していたら、例えば大根一つとっても、コンビニの70円から一つ400円もするお店まで様々であった。タコは輸入物と国産あるいはブランドによって差がある事は一軒目の居酒屋での会話で理解できた。だが大根一つにこれ程までに値段が違うのは不思議だった。
 私達は屋台のベンチに座って、この話をタア子にしたら彼女も驚いていた。そしてタア子の『大根にみる経済学のおでんによる考察』の講義が始まった。
「スーパーの大根が一本200円だとして、一本で8つとったとして原価は1つ25円、それを150円で売っても125円の儲けになるわ。勿論おでんは光熱費がかかるし出汁もたくさん必要だけど、それでも原価は50円程度でしょう。それを400円で売れば350円も儲けになるわ。だとしたら、そこの店は350円の中に大きな経費が入っているのよ。きっと店舗料が高いのよ。ブラマンが検索したその店、銀座か六本木にあったんじゃないのないの?それに比べ、ここの大根は150円だけど屋台だから店舗料がかかっていない。だから100円まるまる儲けよ。」
「おいおい、お嬢さん方勘弁してくれよ。ここは大阪じゃあねえんだから、人の懐を勘定するのは止めてくんな。」と、タオルのねじり鉢巻が似合う初老で細身の親父が笑いながら言った。
 因みに、ここのおでん屋は150円均一料金だ。何より凄いのはその種類の多さだ。私とタア子は、普段食べられないようなおでんを次々と注文した。
 青ネギ、シュウマイ、長芋、ソーセージ、(おでんのネタである)
 シイタケ、タケノコ、レンコン、サトイモ(しつこいが、おでんのネタである)
 トマト、ロールキャベツ、ベビーコーン・・・勿論定番の大根や玉子や厚揚げも注文した。
 ここのおでん屋は、品を切り分けて出してくれる。だから一品ずつ注文しても三人で遠慮なく取り分けて食べられた。私達は食べに食べて、それでも三人で4500円程度だった。