第一幕第四場(8)

 ノブタは明らかに狼狽していた。派手な若い女性を連れていたのだ。まさしく『同伴の図』だった。ノブタは向うの席でその女性を座らせて、『何か注文しておいて、すぐ戻るから。』なんて様子を見せてから私達が座っていたカウンター席に来て、私とタア子をお店の外に連れ出した。
 ノブタは私達に、「この店はマズイよ。」と言うので、私達は「本当にマズそうだったわ。」と言ってやった。するとノブタは「そうじゃなくてこの店を選んだ事がマズイんだよ。何でこの店に来たの?」と訊いたので、私がインターネットで調べて来たのだと告げると、「わかった。店主一人でやっているいい店をお知えるから、そこへ行ったらいい。ここは俺の奢りでいいから、その代りその店で合流させて!お願い。」と手を合わせながら丁重に申し出た。ノブタも悪い奴ではないので、このお店の支払いと、何故このお店がマズイのかを後で教えてくれる事を条件に、ノブタ推薦のお店で合流する約束をした。