第一幕第四場(7)


(若干の漢字変換ミスが出ています。ごめんなさい)
 タア子は私達に、「ここは期待できるかもね。」と小声で囁くと「ここ空いてますかあ〜?」と大声で空席を確かめてから3つのカウンター席へお坊ちゃまとお嬢さんを誘った。
「同伴とは、夜の女性達が出勤前にお客と一緒に食事をしてから、そのお客と一緒にお勤めのお店に行く事よ。勿論お客の奢りだから女性達は高くて美味しい物を食べに行きたい訳よ。でも、こんな安そうな居酒屋にいるって事は、この店は美味しいって事!
 ねえ、メニューを見てよ。居酒屋にしては結構な値段だけどきっと美味しいのよ。ねえ赤ハリ、私が適当に頼んでいい?」
とタア子が言うと、赤ハリの返事を聞く間もなく、刺身盛りと天麩羅盛りを注文した。
 私達は期待して待ったが、期待を裏切られるのに時間はかからなかった。何故なら刺身というには、まさしく身をズタズタに刺されたようなフニャフニャな白身と、これは赤身のつもりなんだろうなと察してあげなければわからない程赤黒い代物が豪華な皿の上を貧相に並べられていたのだった。天麩羅だって同様だ。これを天麩羅だと言って家庭の食卓へ載せれば、「これは天麩羅ではない。」と必ず誰かがクレームをつけるであろう・・・その何のネタかわからない代物達が、ダラ〜リとした分厚い衣を纏って暑苦しく皿の上に横たわっていた。
 一同が絶句して出された料理を眺めていたその時だった。
「こんばんわ〜、2人分の席ある〜?」と聞き覚えのある声がして、そっちを見た瞬間、「あ〜っ!」という男女のハーモニーが店内に響いて、その後女声のソロで「ノブタ〜!」という響きが店内に残った。