第一幕第三場(4)


(こんな景色をいっぱい見てきました。ルナ)
「そうですねえ、5席程度のカウンターがあって、お客さんが入ってきて座ります。私はお客さんにおしぼりを出して、好みのアルコールを出します。それからその飲み物に合うちょっとしたおつまみを出すのです。」
「ちょっと赤ハリ、おつまみって、手でつまめるようなチーズやチョコレートなどの乾き物を出すの?それってバーじゃない。赤ハリは居酒屋をやりたいのではないの?」
「そうですよ。ですからちょっとした食べ物を出すのです。」
「でもその客がすご〜くお腹が空いていて、いろいろとたくさん注文してきたら?」
「うちは飲む事が好きな者が集まる所でして食堂ではありません。ゆくりと食べながら飲んでもらえればそれでいいのです。そしてお客さんのお皿が空いたら私が言うのです。
 『何かお作りしましょうか?』ってね。」
 私もタア子も絶句した。タア子がかろうじて口を開いた。
「・・・ねえ、悪いけど・・・赤ハリは居酒屋に行った事があるの?」
「勿論ありますが、私は飲む事そのものが好きなので、ほとんどは家の中で飲んでいます。」
「へえ〜、奥さんの手料理で?」
「いえ、うちの奥さんは私に対して放任主義ですから何も料理は出てきません。ですから私が適当に旨い物を作って自分で食べます。」
「そおかあ・・・」タア子はそう言うと、しばらく考えてから強い口調で言った。
「よし、赤ハリ!今度3人で居酒屋へいこうよ。とにかく世の中の居酒屋がどんなものなのか社会勉強してみよう。」
「ちょっとタア子待ってよ。私そんな所に行った事ないし、あなただって苦学生でしょう。居酒屋のどこが社会勉強なのよ。」
「君達は心配しなくていいよ。私への勉強代という事で、私が保護者になって君達の分ぐらいは奢りますよ。そのかわり私は居酒屋をよく知らないので、君達が私を居酒屋に連れて行ってくださいね。」
 私は少々呆れた。だって目の前の今から居酒屋をやろうとしている人間が、居酒屋をよく知らないなんて言っている。本当に大丈夫なのだろうか?
 一方、隣のタコは・・・顎が落ち目が点になっていた。
(これはあくまでもフィクションです。)