第一幕第一場(4)

「で、赤ハリ先生がピアノを止めるっていうのはどういう事?ピアノを弾くのを止めるっていう事?それともピアノを教えるのを止めるっていう事?」
「私もよくわからないのよ。とにかく止めるのだと聞いただけなの。」
 タア子が気象予報士でなくてよかった。こいつに天気を予報させると、『明日は天気が悪くなるかもしれません。』だけで終わるのだろう。
「それで赤ハリ先生はピアノを止めて、何をするっていうの?」
「それそれ、それが言いたかったのよう。そっちの方がビックリなの。」
「何故そっちの方も同時に言えないのかなあ?情報を鶏肉のように小分けにして売ってもしかたがないじゃない。」
「ブラマンったら面白〜い。んで、赤ハリが何を始めるんだと思う?」
「だから、もったいぶらないでさっさと言いなさい!」
「居酒屋よ。」
「イザカヤ?・・・い・ざ・か・や?・・・って、あのお酒を飲む居酒屋?」
「そうよ。はっきり言ったじゃない。その居酒屋よ。」
「え〜っ、それって確かなの?オロチ君のニュース・ソースは?」
「なんか、赤ハリから直接ケータイ・メールに入ってきたらしいわよ。」
「じゃあ、タア子の携帯にも入っているんじゃないの?」
「それが入ってないのよ・・・おかしいでしょう?だって、オロチのケータイに入っていたのよ。多分、赤ハリはみんなに一斉送信した筈よ。だったら私のケータイに入っていてもおかしくないでしょう?・・・」
(そうかあ・・・タア子の携帯に入っていなかったという事は、赤ハリ先生はタア子の根拠のない突風のような吹聴を警戒したって事かしら?・・・だとしたらこの話・・・信憑性があるのかもしれない・・・)
「ブラマンのケータイには入ってなかったの?」
「あっ、私・・・滅多に携帯を見ないのよ。今日は家に置いてきたの。急いで帰って見てみるわ。タア子、また連絡するわね。じゃあ失礼するわ。」