エッセンの修道院で(5)


(ライはいつもこんな風にだらけています。)
 アンナは冷静に淡々と話を続けた。
「すると私の考え方は反転したわ。ヴェネチア共和国でハプスブルク家を警戒しているのは、ヴェネチアそのものではないかとね。だって絶対君主制ハプスブルク家を共和国のヴェネチアが受け入れられるはずがないでしょう。だったら以前ピエタでアントネッラとトラブルがあったあなたは、間違いなくヴェネチア側の人間だったという事がわかったのよ。でもあなたがピエタでそのような恐ろしい事をしていたなんて想像すらした事もなかったわ。だからパオラの手紙を読んで驚いたのよ。しかし兄から縁を切られていた私は、あなたをここまで導く手段を持っていなかった。それで私はアントネッラに手紙を書いて送ったの。」
「ええっ、アントネッラさんにですか?知らなかった。彼女に何と書かれたのですか?」
「フフフ秘密よ・・・と言いたいところだけど、今日はあなたに辛い思いをさせているし、私にとっても特別な日になったので、あなたにその手紙の内容を話してあげるわね。今でも忘れられないのよ。」