エッセンの修道院で(2)


(読んでくれてる〜?)
「私もヴィヴァルディ先生に出会えて本当によかったですわ。ただ・・・ピエタには苦くて辛い思い出しかないですけど。」
「あの頃の事はもう忘れなさいって、いつも言っているでしょう。でも今日は、私が思い出させてしまったわね。本当にごめんなさいね。」
「とんでもございませんわ、院長。ところでパオラさんは、今どうしていますか?」
「相変わらず元気なお姉さまよ。私がピエタを去ってからすぐに結婚したのよね。」
「すぐではありませんわ。すぐだったら、私はここへ来る事もなく、もしかしたら私は死んでいたかもしれません。パオラさんが結婚されたのは、院長がピエタからいなくなられて3年後の事ですわ。」
「そうだったかしら。でもパオから手紙を受け取った時は本当に驚いたのよ。あなたの事がずっと書かれていて、まずその内容に驚かされ、自分の近況は手紙の最後の一行に、『ところで私は結婚します、では。』と書かれていただけよ。信じられる?」
「パオラさんらしいですわ。」
「ええ、本当に彼女らしい。でも、あなたもあなたらしいわ。良心の呵責に悩み死のうとしたなんて・・・本当によくここへ来てくれたわね。」
「どこにも身の置き場がなくなり死のうとした私を、パオラさんがこの修道院へ身を隠すように助言していただき、ご尽力してくださったお蔭ですわ。」
「でも本当に驚いたわ。あなたがヴェネチア共和国のスパイだったとは。ピエタに潜入している不審な他国の娘たちを、トファナ水で体調不良に陥れていたとはね。」
「そこまでヴェネチア共和国が追い込まれていたという事ですわ。私はヴェネチア共和国の人間です。ですからヴェネチア以外にこの身を置く所なんてなかったのです。だからパオラさんが院長に連絡をしていただかなかったら、そして馬車を用意していただかなかったら、私はどうなっていたか・・・院長には心より感謝していますわ。それにパオラさんにも。」
「私に感謝なんていらないわ。だってピエタの仲間でしょう。私もあなたと同じ立場だったのですよ。だからもう絶対に、私に引け目を感じないで。わかったわね。」