ウィーンの共同墓地で(1)

「先生、遅くなってごめんなさい。先生、どうか私を許してください。そして、兄をゆるしてください。」
 アンナはヴィヴァルディの墓の前でひざまづき手を合わして祈った。涙が止まらなかった。デンもそれを察したのか、アンナの隣でウォ〜ン、ウォ〜ンと吠えていた。うるさくて耳障りだったが、アンナは黙って許した。それはデンが奇跡的なお手柄をあげたからだった。デンがヴィヴァルディの墓を見つけたのだ。