ローマのアンナ

 アンナはバチカンからローマの街を散策した。もちろん一人ではない。隣で一緒に歩いている輩は、街のいたる所にいる猫に色目を使っている。石畳のあちこちでいい匂いがするのだろう。クンクン嗅ぎまわってなかなか前に進まない。それも今のアンナにとっては丁度いい速度だった。ただ、度々立ち止まるのを付き合ってやるのは少々面倒だ。
「いい加減にしなさい!デン。」・・・これで少しだけスムーズに歩けるだろう。
 街中は多くの人々で活気があった。コロッセオパンテオンなど、ローマ時代からの遺跡が今の人々の生活の中で自然に存在していた。特にアンナを感動させたのは、街のいたる所にある大小様々な噴水だった。ナヴォーナ広場にある四大大河の泉もベルニーニの作だという。広場を教会など高層の建物が囲っている。その教会の前に四大大河の泉なる噴水があった。四大大河で世界を表現したようだ。バチカンやローマの街には、アンナが想像すらできない壮大な世界観が存在するようだ。トレビの泉も壮観で素晴らしい噴水だったが、アンナが一番気に入った噴水は、スペイン広場前の広い階段を降りた所に現れた舟形の比較的小さな噴水だった。隣で一緒に歩いている輩も、この噴水では特に楽しそうだった。長い首を伸ばせば、舟の上から落ちてくる水を容易に飲めるからだろう。デンはさらに舟の周りに溜まっている泉に飛び込もうとしたが、さすがにアンナはそれを阻止した。
 とにかくアンナたちは束の間の楽しい時間をローマの街で過ごしたのだった。