ヴィヴァルディ(2)


(ヴィヴァルディってこんな顔?)
 パオラの情報が確かであった事は、近寄って来たさらなる大声の主によってすぐに証明された。
「おいおいキアレッタ、なんだあのヘタクソなヴァイオリン独奏は。あんなに積極的で上手な弾き方では、初々しい『恋人』ではなく艶々しい『愛人』ではないか。ははは、キアレッタ、元気だったかい?また腕を上げたな。」
「プレーテ・ロッソ!」
 キアーラをはじめ皆が、ヴィヴァルディの姿を確認すると歓声を上げた。ヴィヴァルディは皆と握手をしながら再会を喜んだ。
「すごくいい演奏会だったぞ。君たちが頑張って練習している事が、今日の演奏で十分に伝わってきたぞ。これならもう私が戻って指導しなくてもいいみたいだな。」
 キアーラは涙を流しながら言った。
「プレーテ・ロッソ、また指導して頂けるのですね?私たちまだまだ上手になりたいです。ピエタ合奏団を世界一の楽団にしたいです。」
 パオラもアントネッラもクララも皆が涙を流してヴィヴァルディとの再会を喜んだ。アンナは初めて会うヴィヴァルディを前にして緊張していた。アンナはピエタでの5年の歳月の中で、環境や仲間にもすっかり馴染んでいたし、演奏においてはリーダーとしての自覚もできていた。だが、今現在のこの場では、ヴィヴァルディがいなくなる前からいた仲間と、いなくなってから入った仲間とは明らかに雰囲気が違った。アンナは後者のグループにいた。つまり多くの初心者たちと同じように、グループの後ろの方で緊張と感激をもって、ヴィヴァルディとの再会を見守っていたのだった。