聖ジョルジョ・マジョーレで(2)


(私たちはいつも仲良しよ❤)
 次の日曜日は、ピエタの演奏会のプログラムにフルート協奏曲が入っていた。その曲目が【五色ヒワ】だった。フルート独奏はもちろんアントネッラだ。
 アンナは鳴き声の主を捜しながら言った。
「この声が五色ヒワかあ。協奏曲も綺麗だけど、本物もなんて美しい声で鳴くのだろう・・・」
 パオラが、教会の屋根の上を指さして声の主をおしえてくれた。
「わあ〜、本当に五色なんだ〜本当に綺麗だわ。」
アンナは歓声をあげた。パオラは饒舌に話した。
「顔の赤い斑点は、キリストの受難に五色ヒワが、キリストの額の刺を嘴で抜いた時に付いた血よ。だからあの小鳥は、キリストの受難の象徴でもあるのよん。それにしてもプレーテ・ロッソは面白い曲名のフルート協奏曲を並べたわよね。第1番が【海の嵐】でしょう。第2番が【夜】そして第3番がこの【五色ヒワ】・・・」
 キアーラが口を挿んだ。
「海の嵐の夜、受難が・・・それとも、受難の夜、海は荒れた・・・どちらにしてもなにか象徴的で不吉な題名ね。」
 三人娘はなんとなくアントネッラを思った。三人娘にとってアントネッラの話は、クララが倒れて以来あまり気持ちのいい話題ではなかった。
 パオラが「さあ帰ろうか。」と言い、三人は鐘楼の階段を降りた。