アントニオのゴンドラで(4)


(ライヴィッチのベッドは狭いわ)
 パオラの話が終わると、アンナは話を再開した。
「それでです。ストラディヴァリウス先生がヴィヴァルディ先生と一緒に国営造船所に現れた事を、私がなぜわかったかと言うとですね、その秘密のニスが国営造船所にあったからなんです。」
 キアーラとパオラはその驚愕を、声にならない呻きで表現するしかなかった。
 アンナはアントニオに向かって言った。
「アントニオさん、実は私、あなたの息子さんと友達になったのですよ。」
「もしかして、息子が言っていた『バカでかい犬を連 れた女の子』というのは君だったのか。息子はあの塗料の名前を教えてくれと、わしにしつこく訊いてきたのでな。」
アントニオがそう言うとキアーラが言った。
「まあ驚いたわ。アン、あなたアントニオの息子と友達になっていたの?」
 パオラが続けて言った。
「もしかして、アンと一緒に国営造船所に言った時、民謡を歌っていたあの少年?だとしたらビックリだわ。だってあの日、アントニオを見て逃げた所がたまたま国営造船所だったのよ。しかもそこにアントニオの息子がいたって事でしょう?なんだか神様の悪戯のようね。」