デンとアンナとピーノ(4)


(こんな感じで覗いていたんだよ)
 息を切らしたピーノがデンを抑えている所へアンナがやってきて言った。
「どうしたの?その甕はデンがお気に入りなのよ。お散歩の度に、その中を覗いてはクンクンと匂いを嗅いで、物欲しそうな顔をして私を見るのよ。」
「よく誰からも怒られなかったな。僕がこの甕にちょっと当たっただけで、親方からすっごく怒られるんだぞ。」
「どうして?中に何が入っているの?」
「なんか中国の方でしか採取できない高級な塗料らしい。すごく高価なんだってさ。もちろん効果も凄くて、なにせ海水にめっぽう強いらしい。これを塗れば船は沈まないそうだ。でも少ししかないので高価な船にしか使えない代物だってさ。」
「何ていう塗料なの?」
「名前はわからない。」
「わからない事ばかりなのね。あなたこそバカじゃないの。」
「うるさい。お前よりいろいろと知っているぞ。」
「お前じゃないでしょう。私はアンよ。でも、ありがとう。本当に楽しかったわ。じゃあ行くわね。またデンと来るからね。さようなら。」
「ああ、もう来なくていいぞ。」
 ピーノは悪口つきながら、アンナとデンの後姿をいつまでも見送っていた。
「お〜い、ピーノ!またさぼっていやがるな。」遠くでそんな怒鳴り声が聞こえた。