ストラディヴァリウスのヴァイオリン(3)


(これは私の椅子です!)
「ヒャヒャヒャ、愛するマリーア、お前は本当に賢い娘じゃな。」
老マエストロが崩しっぱなしの笑顔でそう言うと、キアーラもそれに応じるように言った。
「だから言ったでしょう。アンは賢い娘なんだって。どう、タジタジになった?」
「いやいや、まだまだじゃ。なあマリーア、この深紅色ニスの正体は何だとわかるかな?短純な天然木のワニスや蜜蠟だけではないぞ。」
 実はアンナは、このヴァイオリンを手にした時から、深紅色のニスが気になっていた。そして造船所に出入りするようになり、船の塗料を見たりして、どうしてニスが深紅色なのかを察した。しかし誰に訊いても正解はわからないと思っていた。たった今、老マエストロは間違いなく『天然木のワニスや蜜蝋だけではないぞ。』と言った。まさかこんなに早く正解がわかるかもしれないと思うと、アンナは嬉しくてしかたがなかった。アンナは答えた。