『調和の霊感』第1章の解説(3)


(霊感なんてないわ〜)
 デンというでっかい仔犬が登場します。実はこの仔犬がこの小説において重要な働きをします。
 このデンのモデルは私の飼っているルナピンスキーです。犬種はグレート・デンで「偉大なるデン人」という意味があり、そのせいでデンマーク犬だと誤解されている場合もありますが、れっきとしたドイツ犬です。ですからドイツでは「グレート・デン」とは呼びません。小説のデンは仔犬で大きな耳が垂れています。ルナピンスキーは耳が立っています。これは断耳(耳を切って立たせます)のせいです。なるべく大きく耳を立たせるのが上手な獣医さんだそうです。今は動物愛護の精神で、ヨーロッパでは断耳は行いません。アメリカと日本ぐらいのものだそうです。大きな耳が垂れたグレート・デンは全く違う犬種のような感じです。当然『調和の霊感』のデンも成犬になっても耳は切られません。ですから我が家のルナピンスキーがそのままモデルになっていたのでもないのです。
 グレート・デンの名前の由来ははっきり分かっていません。フランス人がそう言いだしした、という説もあります。ドイツ嫌いの人があえてドイツの隣のデンマークにかけて『偉大なデン人』と付けたのでしょう。この小説ではそのまま、アンナが『グレート・デン』と命名した事にしちゃいました。というのが、アンナはドイツ嫌いなのです。その理由は今は言えません。この小説の重要な鍵になります。ヒントを言いますと、解説(2)で話しましたように、アンナの本名は『アンヌ・シャルロット』で実在した人物です。アンナはドイツ読みでアンヌはフランス読みです。『調和の霊感』はヴェネチアが舞台ですが、当時のヨーロッパの政争もこの小説に反映しているのです。
 ちなみに我が家のグレート・デン「ルナピンスキー」は、保健所で処分寸前を我が家が引き取ったのです。ですから嵐で死にそうになりながらヴェネチアにたどり着いたデンに思い入れを持ちながらデンの様子を描写しています。ちなみに我が家のルナピンスキーは初めて我が家に来た時から身体もでっかいし(3歳)態度もでっかかったです。(今も炬燵の中でいびきをかきながら寝ています。)