音楽ミステリー小説『調和の霊感』第1章の解説(1)


(霊感は全然ありません)
 タイトルの『調和の霊感』はヴィヴァルディの協奏曲集のタイトルをそのまま使いました。この小説の根幹はヴィヴァルディの生涯、特に晩年ウィーンで客死した事実を元にしてあります。第1章はまだヴィヴァルディは登場していません。(ヴィヴァルディの話は盛り込んでありますが)ですが、この小説の主人公であるアンナ・マリーアが重要な位置を占めています。
 アンナ・マリーアはキアーラ(キアレッタ)と共に、実在した人物です。当時のヴェネチアには慈善院という孤児院が4つありました。その中で優秀な合奏団、合唱団を抱えていたのがピエタ慈善院でした。その中で有名な演奏者として名前が残っているのがアンナ・マリーアとキアーラです。小説ではキアーラはアンナより20歳上に設定していますが、事実はわかっていません。もしかしたらアンナの方が歳上かもしれませんね。この小説ではアンナ・マリーアは偽名で本名はアンヌ・シャルロットになっています。このアンヌ・シャルロットも実在した人物です。当然アンヌの兄フランツも実在した人物です。フランツはこのミステリー小説では重要な位置にありますので、ここで明かす訳にはいきません。
 アンナがピエタ慈善院で仲よくなったパオラは、架空の人物です。アントネッラも架空の人物です。が、モデルははっきりしています。私がイタリアの講習会でとっても仲良くなったフルート仲間の名前を拝借しました。でも名前だけでなく性格もかなり似せて描写してあります。パオラはちょっとポチャッとした明るい娘で私は大好きでした。講習会が終わった翌日故郷に帰るバス停まで私はパオラを送っていきました。彼女は私の頬にキスをしてくれました。アントネッラはパオラ以上に仲良くなりました。彼女はなぜか私を大変気に入ってくれてました。ドイツに帰った後も熱烈なラブレターが何回か届きました。もし私が現在でも彼女たちの住所を知っていて、この小説をイタリア語に訳せたなら、是非とも彼女たちに読んで欲しいと思っています。そういえばその講習期間中の休日に行ったのがヴェネチアでした。あと、アントニオとその息子ジェゼッペ(ピーノ)そしてクララも架空の人物でモデルはまったくありません。ですが、アントニオはヴィヴァルディ、ジョゼッペはイタリア歌劇の大家ヴェルディのファースト・ネームでクララはシューマンの奥さんの名前でもあります。でもそれを意識して付けたつもりはありません。