アンナのデビュー(2)


(そろそろ僕もデビューを・・・)
 曲が終わると、ピエタ合奏団で一緒に演奏した弦楽器の皆と、その演奏を見ていたパオラたち管楽器の皆が、新人のアンナに惜しみない拍手を送った。それはアンナが、次回のピエタ演奏会でデビューをする事が決定した瞬間でもあった。アンナは緊張が解けたのかホッとしたような表情を浮かべた。だが、すぐに冷静なアンナに戻った。皆が自分に向けて笑顔と歓声をもって拍手をしている中で、さっと背を向けて部屋から出ていった人影を見たからだ。アントネッラだった。するとアンナは思い出したように皆に願い出た。
「私、次の演奏会で是非やってみたい曲があります。それはヴァイオリン協奏曲【海の嵐】です。」
 キアーラがすぐに援護してくれた。
「私は賛成よ。次回の演奏会をアンナのデビュー・コンサートにしない?アンナが敬愛しているプレーテ・ロッソの協奏曲を並べるの。【春】と【海の嵐】と管楽器の協奏曲を2曲。それからこの曲を演奏しましょうよ。」
 キアーラの提案に異を唱える者はいなかった。こうしてアンナのピエタ演奏会のデビューが決まった。