ピエタに孤児犬が来た(2)


(孤児犬ってもしかして私がモデル?)
 アンナは、目の前の暢気に寝ている大きな仔犬をじっと見ていた。
 その仔は時々片目を開けてはアンナを見て、またすぐに目を閉じて安心したように眠った。
 アンナは小さな声で、その仔犬に聞こえるようにはっきりと呟いた。
「お前がドイツ犬でも、私はドイツが嫌いなの。お前はデンマーク王国の人たちと海を渡ってきて、嵐にあっても頑張ってここまで泳いできた立派な仔犬よ。偉大なるデン人の仔・・・そう、お前の名前は『グレート・デン』よ。」
 アンナは、眠っているその仔犬の前に立って見下ろしながら言った。
「デン!立ちなさい。」
 仔犬はスクッと立ちあがってヒシッとアンナに身体をあずけた。仔犬のわりには結構な体重だった。その温もりには尊い命が感じられた。アンナはこの仔犬を愛おしく思った。
「お前は今日からデンよ。わかった?お前の名前はデン!」
アンナがそう言うと、デンが嬉しそうに勢いよくシッポを振った。