ピエタに孤児犬が来た(3)


(デンってやっぱり私の事じゃない)
 デンは賢い犬だった。立て、座れ、つけ、お手など、基本的な動作はすぐできるようになった。もちろんその躾をしたのはアンナだった。アンナはデンをピエタ近くの広場へよく連れていった。そこでデンにボールを投げたり、ロープを噛ませたり、デンの躾の為にいろいろと遊びながら訓練した。
 ピエタの仲間たちは、物覚えのいいデンを褒めてくれた。アンナは自分が褒められたようで嬉しかった。だが中には、毎日欠かせられない朝晩のお散歩に同情する声も無くはなかった。しかしアンナにとっては、デンとのお散歩は楽しい時間だった。晴天の下で、デンと一緒に考え事や音楽を口ずさむのは気持ちがよかった。アンナが民謡などを歌っていると、デンもウォウウォ〜と一緒になって歌った。アンナがデンの大きな垂れた耳を掴み上げ、口を近づけて話をすると、デンはおとなしく聞いてくれるのだった。話が終わるとブルブルと顔から耳まで激しく震わせて、ペロリとアンナの顔を舐めるのだった。
 アンナはその日もデンと広場に来ていた。
 デンがロープを咥えて、そのロープを勢いよく宙に飛ばす。それが楽しいのか自分も勢いよく何度も飛び跳ねては喜んでいる。まだ仔犬とはいえ、その迫力は決して可愛いとはいえなかった。
 アンナはその様子を見ながら考え事をしていた。