パオラの話(6)


(寝ていてもお耳だけはしっかり聞いています)
 二人の沈黙の時間は、アンナから話の続きを切り出させる事になった。
「パオは、その後でアントネッラに会ったのね?」
「そうよ、彼女はアントニオの事はすぐに認めたわ。でも私は彼女を憎んでいない。なぜなら、彼女のお蔭で私は気づいたの。私は誰よりもキャラを愛しているのだって。浮気者のアントニオよりずっとずっとキャラを愛しているのだってね。だから私は急いでキャラに手紙を書いたの。それがアンがキャラから見せてもらったあの手紙だったという訳よ。」
「それでキャラとは仲直りできたのね?」
「その通りよん。こうしてパオラは再びキャラの妹になりましたとさ。めでたし、めでたし。」
「キャラとアントネッラの仲は、その後どうなったの?」
「さあねえ・・・どうにもなっていないのだと思うわ。あえて言うなら、キャラはアントネッラに対して自然体という無視の方法をとったのだと思う。
 さあアン、私は全部話したのだから、今度はあなたが私に話す番よ。私ね、あなたに質問したい事が山ほどあるのだから。」
「パオ、本当に本当にごめんなさい。今度は私の頭が細胞分裂を始めちゃったみたいなの。パオには近いうちに絶対に話をするから、今日は見逃して。お願い、パオお姉さま!」
「パオお姉さまときたかあ。お姉さまという言葉には弱いからなあ。よろしいアン、本当に私の事をお姉さまと認めてくれるのなら許してやろう。今日は帰ってよし!」
 アンナは、おやすみなさいと言って、パオラの部屋を出ていった。
 それを見送ったパオラはため息をつきながら、ニヤニヤして思った。
(アンったら、私の質問が何かも聞かないで出ていったわ。一体私が何を質問すると思ったの?そして私に何を話してくれるのだろう?)
 窓がガタガタと【海の嵐】を激しく奏でていた。