パオラの話(5)


(人の話は聞けないにゃ〜)
 アンナは話の核心をへ急いだ。
「パオはどうしてアントニオさんに、その後会わなくなったの?」
「アンったら、もう相変わらずなんだから・・・私がその後はアントニオに会っていないって言ったかなあ?」
「だって、この前パオと一緒にヴェネチア巡りをした時、アントニオさんを見て逃げたじゃない。」
「そっか、アンにはバレバレね。わかったわよん。
 アントニオに会った時、最後に私は彼に訊いてみたの。『もし仮面を外した時、その顔がキャラではなくアントネッラでもなく、それが私だったらアントニオはどうした?』って。
 彼は言った。『もしそうだったら、自分は最高の幸 せを感じながら君を抱いたよ。』だって。
とんでもない男でしょう?だからあれからアントニオには会っていないわ。」
「パオ、私にいろいろと話してくれて本当にありがとう。お蔭でよくわかったわ。なによりよくわかったのは、パオがどんなにキャラを愛しているのか・・・かな。パオはアントニオさんの事をとんでもない男だと言ったけど、最後のアントニオさんの言葉は、パオにとって実は嬉しかったのではないの?」
 パオラはアンナの言葉にドキッとさせられた。でも不思議と不愉快にはならなかった。
「パオもキャラと同じように、アントニオさんとの関係が友達から次第に恋愛感情にかわっていったのね。キャラと違ったのは、パオはそこまでの自覚がなかった・・・いや自覚を認めたくなかったのだと思う。パオは、キャラもアントニオさんも失いたくなかった。だから恋愛感情を理性で縛っていたのよ。パオはアントニオさんの最後の言葉が嬉しかったはず。だからこそアントニオさんの不貞が許せなくなった。そしてキャラと同じくアントネッラの裏切りも許せなかったのね。」
 二人はしばらく沈黙した。
 アンナは、パオラにちょっと言い過ぎたかなと、少しだけ後悔していた。
 パオラは、改めてアンナの冷静で明晰な頭脳に感服していた。(なんという15歳!)