パオラの手紙(3)


(私たちも長い耳で聞けますよ❤)
 パオラは、アンナの心が読めていた。
「アントネッラが謝肉祭の衣装を着た犯人だとすぐにわかったわ。だってアントネッラこそ、キャラ以外で私の部屋を自由に出入りできる唯一の人物だからよ。
あの事件までは、私とアントネッラは友達だったの。少なくとも私はそう思っていた・・・だけど本当の友達って、お互いに信頼しあえる関係でしょう?でも私はアントネッラを疑ったの。真っ先にアントネッラに会いに行かなかったのは、彼女を信じていたからでも、真実と直面するのが怖かったからでもないの・・・
 私はすでに犯人がアントネッラだと確信していた。彼女と会ってしまうと、もうアントニオと会えなくなるような気がした。彼女と会っていたのがアントニオであった事を信じたくなかった。おかしいでしょう?私はアントネッラよりアントニオを失う事の方が怖かったのだと、その時初めて自覚したのよ。だからこそ私は真っ先にアントニオに会いに行ったの。」
 アンナは、パオラが冗談の一つも言わないで真面目に話してくれる事に好感を持った。そして彼女の真摯な気持ちを感じていた。
「アントニオは私の知った事実をあっさりと認めたわ。謝肉祭で会ったのはアントネッラだった事。そして彼女と寝た事など全部包み隠さず私に話してくれたわ。でもキャラが、私とアントニオの関係を疑っていたのだと言ったら、彼はビックリしていた。あの日、キャラがアントニオの前に現れた時に彼が謝ったのは、自分の不貞に対して謝ったのだと言っていたわ。
 彼は、いつもの仮装で現れた女性がキャラだと思って、彼女といつもの部屋へ行ったそうよ。ところが仮面を取った彼女は、キャラではなく違う女性だった。しかも彼女はアントニオに愛を告白したそうよ。だからアントニオは彼女を・・・」
 パオラは涙を流していた。アンナはその涙に同情する事はできなかった。
「二人が関係した後、彼女は自分がピエタにいるアントネッラだと告白したそうよ。そして自分と時々会って欲しいと言ったらしい。でもアントニオはそれを断ったと言っていたわ。」
 アンナは、アントネッラがなぜアントニオに近づいたのか考えていた。アントネッラは計画的にパオラの部屋からキャラの仮装の衣装を持ちだした。そして自分をキャラに扮してアントニオに会った。ようするに彼女は確信犯だったのだ。その目的は何だったの?