パオラの話(2)


(ライもピシッとして聞けます)
「だから・・・キャラがあんなに苦しんでいたなんて知らなかった・・・いや、私が冷静だったら気づいていたのかも。アントニオに会っていた4年間の中で、私の目的は前菜であるキャラの話ではなく、アントニオに会う事そのものに変わっていた。
 キャラはアントニオと謝肉祭で祝福されていた。私はそれを嬉しく思っていた。だから自分の気持ちに気がつかなかった。」
 パオラはアンナを注視した。アンナはそのパオラの目をじっと見た。何か言いたかったが気のきいた言葉が出てこなかった。
 パオラは少しひきつった微笑をしてからアンナを見て言った。
「そしてあの事件が起こったの。
 私は、キャラから渡された謝肉祭の衣装を着るつもりは全くなかった。だってあれは、キャラがアントニオと会う為の正装だったのよ。それを着るなんてできる訳ないじゃない。でもその時の私は、キャラがなぜその正装を私に着れと言ったのか、その真意が理解できなかったの。私はその服を、そのまま衣装ダンスに収めておいたわ。私はその衣装の存在すら忘れていた。
 だからキャラが血相を変えて私の部屋に来た時は本当にビックリした。でももっとビックリしたのは、衣装ダンスを開けてもあるべきはずの衣装がなかった事だった。私はその時、どうしたらいいか判断できなかった。ましてやキャラから、私とアントニオが密会したなんて言われたのよ。だから私はとにかくキャラに、信じて、とお願いするしかなかった。
 辛かった、本当に辛かったわ。頭が混乱したまま、しばらく茫然としていた。どうしたらいいかわからなかった。そして泣き崩れていたわ。キャラに嫌われ、アントニオにも会えなくなったのだと自覚したからよ。
 数日後、衣装ダンスを開けるとキャラの謝肉祭の衣装がそのまま置かれていたの。私はまたまたビックリした・・・ビックリしながら、頭の細胞が急に騒ぎ出したの。で、とにかくまずアントニオに会う事にしたの。」
 アンナは、どうしてまずアントネッラに会わなかったの?と思いながら、黙ってパオラの話の続きを聞く事にした。