山ちゃんの一日(その3)


(朝はお散歩の時間でしょう)
 夜遅く家に帰った山ちゃんは、それからすぐに寝るのではない。どうせお酒を飲むんだろう・・・とルナピンスキーは思っている。それは確からしいのだが、飲みながら仕入れなどの経理を整理してノートに書き込んでいく。つまり肉から大根一本までいくらかかったかノートに書き込んでいく。それがけっこうめんどくさいのだ。当たり前である。今までの山ちゃんは数字とは全く無縁な生活を送っていたのだ。年末の税理関係も毎月のレッスン料を合計したものを書いた紙とガソリン代等の領収書をまとめて税理事務所に勤めているお弟子さんに丸投げしていただけなのだから。今まで買い物をしてもレシートを見た事もなかった山ちゃんが今ではいっしょうけんめいにレシートを集めてはそこに書かれている商品とその値段をノートに書き込んでいるのだ。最後にそれらのレシートをまとめてノートに貼り付ける。それから売り上げの伝票とレシートを別のノートに貼り付けて終わりだ。ただし毎晩真面目にそれを行っている訳ではない。いつのまにか寝てしまう事もある。その場合は朝それをする。そして前の日の収入を銀行に入金しに行く。通帳に毎回記入されるその数字こそ、税理事務処理に必要になってくるのだ。そんな毎日を山ちゃんは送っている。始めは追われるような毎日だったが、そんな日々にも慣れてきたと言っている。
 今日は山ちゃんは朝からけっこうのんびりしている。お陰で久しぶりに充実したお散歩になった。今日は予約が入っていて特別料理だそうだ。鍋がいいとのリクエストで、山ちゃんは合鴨を仕入れてカモ鍋にするそうだ。これは山ちゃんの得意な鍋らしい。まてよ鍋なんて誰でも上手にできるのではないか?・・・まあいい。山ちゃんがご機嫌ならルナピンスキーも嬉しいぞ。さあそろそろ山ちゃんは仕入れに出かけていくようだ。今日も帰るのは深夜なのだろうか・・・