山ちゃんの一日(その2)


(ルナピンスキーは待てもできます)
 山ちゃんのお店『赤いはりねずみ』にも、時々予約が入るらしい。そんな時は仕込みも気合が入る。だからと言って早く仕込める訳ではない。それどころか予約はだいたい6時から7時ごろだから、それに合わせて仕込みも遅くなる。5時過ぎてから長芋をすったり肉に衣をつけたりしている。そんな時急にお客さんが来たりして大変な事になる。でも、そんな日は滅多にない。だから、開店を6時からにしようと山ちゃんは考えているようだ。山ちゃんの事だ、そんな事をしたらもっと仕込みが遅くなるとルナピンスキーは考えている。だいたい7、8時位にお客が来て食べて飲んで帰っていく。そして10時過ぎの客は飲む事が中心だ。『赤いはりねずみ』は繁盛しているとお世辞でもいえない。でも山ちゃんは暢気にも「最初はこのくらいの方がいい。徐々に仕事を覚えてなれてくるから。」なんて言っている。だけどお客さんが一人の時でも疲れる。身体ではなく心が疲れるそうだ。先日、友人たちがお店にやってきて0時過ぎまで大騒ぎして帰って行った。その日は山ちゃんの音楽関係の人達も予約で来たり、常連さんがやってきたりで過去一番の繁盛だった。当然皆が帰った後はたくさんの洗い物が残る。最初の頃は「お客さんがいる間は洗い物をしない方がいい」という忠告を忠実に守っていたので、その後の洗い物で家に帰るのが4時なんて事もあったが、最近は要領よく洗い物をしているのでそれほど大変ではなくなった。とはいえ、最後に残った皿やコップは大量だ。皆が帰った後に山ちゃんは、ほっと一息つきまずビールを飲む。(またそこからかよ!ルナ)そして洗い物を始める。そしてふきんやお手ふきを洗って干して、トイレを掃除してからレジを清算してお店を出る。フラフラと自転車で家に帰りつくのが、最近では遅い時で2時半位で早い時は0時にすぐに店を出て急いで帰るので0時15分位だ。先日の友人たちが大騒ぎした翌日、一人の友人から「昨日は大変だったね。疲れただろう?」とねぎらいの電話があった。すると山ちゃんは「いや、儲かれば疲れなんて感じない。客がいない方が疲れる。」なんて言っていた。山ちゃんもすっかり商売人根性になってしまった。