試食会騒動記


(私たちはお利口さんで待っています)
 山ちゃんは店の内装を自分で変える事にした。天井をアイボリーのペンキで塗り、壁を珪藻土で塗った。木の部分は柿渋を塗った。毎日が佐官業のような生活だった。時々気分転換に看板を書いたり壁に絵を描いたりした。看板はブラームスが歩いている影絵を。壁には赤いハリネズミを描いた。腰板をつける事にした。これは仕上がり次第で店の雰囲気にかかわる事なので専門家に任せる事にした。でもその板には山ちゃんが柿渋を塗った。柿渋は天然の防虫効果があり色合いも素晴らしいのだそうだ。その内装が何とか試食会に間に合った。
 試食会は大騒動だったらしい。2回したのだが、1回目は友人が多くて落ち着いた雰囲気で何とか皆さんに美味しく食べて頂いた。2回目は家族連れや知人たちで大騒動だった。試食会だって言っているのに、酒やビール、焼酎の注文は当たり前。それにご飯をくれだのデザートは無いのかだの・・・料理を振る舞うどころではなかった。でもそうだったのだ。山ちゃんは勘違いしていた。居酒屋とはおじさんが酒を飲んで、酒の肴に何か頼む所だと・・・だが違うのだ。今では居酒屋に家族で来て、あれやこれやと注文してご飯まで食べて帰る所なんだと・・・これは大きなギャップがあった。山ちゃんは気持ちを切り替えていよいよプレ・オープンにのぞんだのだった。