ストックホルムでの奇跡


(これが奇跡のポーズ・・・?・・・失礼!)
 山ちゃんはストックホルムへ着いた時はもう帰りの旅費位しか残っていなかった。それにしてもストックホルムは北欧の水の都と言われるくらい素晴らしい街だった。パリがもし北欧にあったならこんな街になったのだろうと思った。ストックホルムでも美術館に行った。それから大きな難破船の展示場も見た記憶があるようだ。それにたまたま近くにあった水族館に行った。ストックホルムの2月は当然寒い。気温も氷点下10度位だった。そんな環境の水族館だ。アシカもペンギンも生き生きとしていた。当然だが、それでも見ていた山ちゃんがとっても元気をもらったらしい。だってアシカなんてビュンビュン泳いでいたようだ。
 ストックホルムの物価はやはり高かった。平均500円から800円程度のユースの値段も2000円程度だった。マクドナルドのハンバーガーが800円程度でコーヒーが500円位だった。だから山ちゃんはスーパーでパンとキャビアもどきの缶詰とビールを買ってユースで食べた。ユースには(どこのユースもそうだが)日本人旅行者がいた。その一人と意気投合した山ちゃんは、買ったパンにキャビアもどきを挟んだサンドウィッチにして彼と食べた。彼はルクセンブルグでパンの修行に来ていると言った。印象的だった言葉は「やはりヨーロッパの小麦は日本とは違う」というものだった。そして彼は、山ちゃんがトラブルでお金が無くこのままデトモルトへ帰るのだと聞くと、せめてノルウェーまで旅行して欲しいと言って、そして後で送ってくれたらいいからと2万円貸してくれた。山ちゃんはこうしてノルウェーまで行く事が出来たのだった。
 後日談である。最近テレビで東京で評判の店があってその職人がルクセンブルグで修業したと伝えていた。おそらく彼なのだろう。会ってみたいと山ちゃんは言っていた。お前お金返してないとちゃうか?とルナが訊くと、山ちゃんはちゃんとデトモルトへ戻ってから封書で送ったと言っていた。