一時帰国の準備を始める


(私たちも旅行の準備よ❤)
 山ちゃんがドイツへ来て学生になって2年になる。そして1年後は卒業試験だった。卒業したら日本へ帰る覚悟を決めていた。それは、一人っ子だから将来は両親の面倒をみなければならなかったのだ。と山ちゃんは言っているがルナピンスキーは、山ちゃんがドイツで暮らす自信が無かったのだと思っている。もっと具体的に言うと、ドイツで不自由なく暮らす語学力とフルートの実力が無く、そのあげく女にもてなかったに違いないのだ。
 とにかく山ちゃんは卒業1年前の春、日本へ約1ヵ月間帰国する事にした。それは完全に卒業した時の為に準備しておくためだった。と山ちゃんは言っておるがルナピンスキーは山ちゃんが日本を恋しくなって我慢できなくなったのだと思っている。
 それでもだ、日本ではいろいろとしておきたい事が山ほどあった。
 山ちゃんは完全帰国したらすぐに帰国記念のリサイタルをするつもりだった。その打ち合わせを友人としなければならなかった。その友人は小学生時代からの付き合いだった。ドイツに来てからもかなりの数の文通をしていた。その折に山ちゃんは手紙と同時に雑誌から切り取ったノーカットの女性の写真を入れて送っていたのだ。そのくらい仲良しなのでその友人が協力してくれるはずだった。
 あとはフルートをオーバーホール調整するつもりだった。時間があれば新しいフルートも探したかった。
山ちゃんは日本にいる知り合いの音楽関係者にかたっぱしから挨拶にいくつもりであった。
 すると日本から嬉しい話があった。それは地元の有名な教会の関係者から、その教会が行っているコンサートのちょうど100回目になるのでオルガンと一緒に演奏して欲しいというものだった。しかもその模様がFMラジオで全曲放送されるという。実に幸運だった。山ちゃんの春休みは忙しくなりそうだった。