山ちゃん、学生寮を出る


(ちょっと失礼します・・・モナカ)
 山ちゃんは、1年後の2月に卒業試験を受ける事に決まった。曲もだいたい決まった。あとは練習に取り組むだけだ。
 学生寮の生活も快適だった。だが、試験に向けて環境を変えたくなった。そこへいい寮ができたとの話があった。そこは住んでいた学生寮がある山のふもとにある。だから大学も少しだけ近くなる。そして町中まではもっと近くなる。なにより山を登らなくてよくなる。その寮は以前は盲人が住んでいたアパートだったらしい。だから名前がそのままブリンデンハウス(盲人の家)という。そしてそこのなによりよかったのは部屋で練習出来た事だ。学生寮だと練習室まで行かなくてはならなかったし、滅多にない事だが練習室がいっぱいだと空くまで待たなければならなかった。それが今度は自室で練習できるのでいつでもすきな時に練習出来た。それに学生寮はその頃は日本人が10人以上はいた。みんな仲がよくてそれなりに楽しかったが山ちゃんは一人になって集中したかった。もともと山ちゃんは一人っ子でわがままでA型のマイペースだったので、自分の世界を確保したかったのだ。もちろん部屋で自炊も出来た。学生寮は共同キッチンがあって
基本的にはそこで炊事をしなければならなかったが、山ちゃんは部屋に電気コンロと冷蔵庫を置いて部屋で炊事をしていた。だからそれらをそのまま使えばよかったのだ。寮費も光熱費込みで約2万円と学生寮並みに安かった。あえてデメリットをさがすとすれば、学生寮にはシャワーとバスがあったが、そこはシャワーしかない事と、建物が古いので暗いという事、あとはそこが音楽学生寮になってまもないのでまだ学生が少ない事、だから中が閑散としてさみしい事くらいだろうか。ただ、デメリットは山ちゃんにとっては全く問題なしだった。という事で引っ越すことに決めた。