プラハでのホテルさがし


(仲良くカンパ〜イ)
 山ちゃんは翌朝、老人にお礼を言ってスタジアムの夜警室を後にした。さてまずはその日泊まるホテルさがしだ。
 実はその時の山ちゃんはお金持ちだった。なぜなら、その頃のチェコでは一日滞在するごとに約4000円をチェコの通貨コルナに換金する事が義務づけられていた。その日まで山ちゃんはブラチスラバで1泊夜行列車で1泊プラハで1泊したので4日分約16000換金したが宿泊費はかかっていなくて、物価も恐ろしく安く(でも物が無い)ほとんどお金を使っていなかった。だからけっこう高そうなホテルに泊まっても大丈夫なのだった。
 大通りにあるホテルに入った。エレベーターに乗った瞬間、従業員が山ちゃんに「チェンジ・マネー」と言ってきた。これは東欧でよくある事だが、換金の闇取引だ。銀行で替えるよりも2倍近く高率で替えてくれる。相手もそうまでしてもメリットがあるのだ。
替えた外貨をウィーンなど西側でコルナに替えると何倍かにはなるのだろう。しかし山ちゃんはそんなブラックマーケットに手を出した事はなかった。それは、見つかったら恐らく大変な事になるからだ。
従業員は高額のコルナ札を見せて「約1000円分のドイツマルクでいい」と言ってきた。山ちゃんは「小額のコルナ札はないのか?」と言うと、彼は「街で買い物しておつりをもらえばいいではないか。」と言ったが、見た事も無い高額のコルナ札に不信を持ったので断った。あとですぐに調べたのだが、やっぱりそんな高額のコルナ札は存在しなかったのだ。
 ホテルの受付で今晩泊まりたいがいくらか?と訊いたら一泊4000円だが、空室があるか今はわからない、と言う。山ちゃんは「それは困る。今日ホテルに泊まれないのなら今日ドイツに帰る。泊まれるなら明日帰るので一日分の換金が必要になる。」そういうと
彼は「正午にわかるので、その時に来てくれ。」と言う。『なんでやねん』と言いたかったが、わかったと言ってそのホテルを出た。他のホテルも同様の対応だろうと思い昼まで観光をする事にした。
当時の東欧はこんなものだった。だから別に驚かなかったし、玉ちゃんは泊まれるだろうと思っていた。
結果的には、昼すぎてそのホテルに行くと泊めてくれると確約してくれた。やっとまともに寝れるのだ。