山ちゃん、フルートを持って帰る。


(最近、散歩に意欲がなくなったルナでした)
 高価な楽器というものは、「これ下さい」「いいですよ」というような簡単なものではない。それは楽器商も心得ているので、ある程度試奏させてくれる。
山ちゃんが、気に入った楽器でデトモルトに持って帰って試奏してアヒレス先生に相談するまでに至った楽器が2本あった。
 1本目は、あるオーケストラのフルート奏者が持っていたドイツの名門フルートで中古だった。もちろん雑誌「オーケスチラ」の広告に載っていて、本人に連絡を取って会いに行った。そこで吹いて、状態が良くて気に入ったので持って帰った。響きはかなり良く、先生の前でも演奏したが、結局バッハを吹くにはいいが、モーツァルトは?、フランス近代だと厳しいとの結論になった。楽器は梱包して送り返した。
 2本目はあるドイツ人楽器商が日本のあるメーカーが気に入って個人的にその楽器のみ取り扱っている人だった。山ちゃんは当時そのメーカーを知らなかったが日本の知人に連絡してけっこういい楽器だという事と値段が手ごろだったので、その楽器商に会いに行ったのだった。前回と同様に気に入って持って帰って、先生の前で吹いてみた。バッハもモーツァルトも近代フランス音楽もよかった。先生も「まあいいんじゃない」と言ってくれた。少し迷ったのだが、「すごくいい」と思えなかったので最終的に購入しない事にした。という事で、新しい楽器はまだ手に入っていない。
 余談だが、こんな事もあった。山ちゃんの憧れだったドイツの楽器を売りたがっている人がフランクフルトにいて、電話で連絡して会いに行った。試奏させてもらい気に入ったので、デトモルトへ持って帰って、もうちょっと吹きたいと言ったら、「楽器の代金を全額払ってくれたらOKだ。もし気に入らなければ、楽器を返却してくれたらお金も全額返す。」と言われた。ありえな〜い!片道約5時間旅費約12000円は徒労に終わったのだった。