デトモルトの野生動物たち


 デトモルトは田舎町だったので自然が豊かだった。
小高い山の頂にある寮から少し下りながら歩いて5分で管楽器ハウスに行けた。前回書いたように、その辺で鹿を見るのも珍しい事ではなかった。大学の庭の木々にはリスがチョロチョロしていた。日本のシマリストと違ってもっと大きかったのでよく目に着いた。もっとも日本の場合、田舎でも山に行かなければ自然のリスに会う事はない。山ちゃんは寮の庭でハリネズミにも出会った。ネズミというから素早いのかと思っていたら、なんとものんびりしたかわいいネズミだった。ハリネズミを初めて寮の庭で見た時にビックリしたし感動した。観察していたら歩いているのにほとんど進まない。山ちゃんが慌てて部屋に戻ってカメラを持ってきても1メートルも進んでいなかった。山ちゃんはハリネズミをひっくり返したりしながら写真に撮ったそうだ。
 寮から学校方向と反対方向へ歩くとすぐに森になり5分も歩けば広大な平原に出る。春になればその平原は一面の菜の花畑になる。冬は一面の雪景色だ。しばしば野ウサギも現れた。つぶらな瞳でこちらを見ていた・・・というシーンはなかった。遥か彼方から凄い勢いで滑走して遥か彼方へ消えていった。ハリネズミと対照的にウサギがこんなにも速いと初めてわかったのだった。そういえばドイツではこのウサギを食べるらしいが、山ちゃんはウサギを食べた事はない。