あるピアノ留学生の話(その2)


(ある朝、小学生の女の子がライヴィッチを見て、
 ウツボみたい〜!と走り去った。ウマイ!)
 山ちゃんとそのピアノ留学生の付き合いは1年半で消滅したようだが、卒業試験と帰国記念コンサートのピアノ伴奏はしてもらったようだ。それ以来1度も会っていないと書こうとしたら、山ちゃんが帰国して半年後に1度だけ会っており、その時も面白いエピソードがあったと言うので今回はそれを書こう。
 山ちゃんが日本へ帰って約半年後演奏の依頼があったが伴奏者が急なキャンセルでいなくなって、たまたま故郷福岡に帰っていた彼女に伴奏を頼んだ。演奏の場所は本州の最西端下関だ。彼女の故郷福岡は九州にある。その年は本州と四国の連絡橋、瀬戸大橋が開通した年でもあった。
 コンサートが終わり、彼女を駅まで送っていく前に関門海峡の見える喫茶店へ入った。山ちゃんは母親と弟子を同席していた。以下は海峡を見ながらの母親とピアノの彼女と山ちゃんとの会話である。
母「こうして見ると、九州まで近いですね。」
彼女「そうですねえ、もうすぐ本州なんて信じられな   いですねえ。」
山ちゃん「あっちが九州!」
彼女「えっ、福岡ってどっちにあるの?」
山ちゃん向うを指さし「あっち!」
母「そういえば瀬戸大橋はもう行かれたのですか?」
彼女「多分、小さい頃に行ったと思うのですが、覚え   ていません。」
山ちゃん「瀬戸大橋は今年できたの!」
彼女「あっ、そ〜、でも瀬戸って聞いた事ない?」
山ちゃん「瀬戸内海や瀬戸ものとかあるからねえ。」
駅へ送っていく時間になった。
山ちゃん「じゃあ下関駅へ送るから。」
彼女「ええ、海の向こうまで送ってくれるんだ。」
山ちゃん「こっちが本州で下関は本州!あっちが
     九州で、あなたはあっちへ帰るの!」
そして、下関駅へ彼女を送って行ったのだった。