山ちゃん、大学時代の後悔。


(ムンちゃんが亡くなったのも後悔だって)
 山ちゃんは、いよいよスイスのローザンヌ夏期講習会へ行ったのだが、この講習会についてはあまり筆が進まないそうだ。いや、筆はこのルナピンスキーが進めているので、この件は山ちゃんの舌が動かなくなるみたいだ。
ここからルナピンスキー談
 そりゃ、そおーだろ。夏休みの講習会前にあれだけ遊んでいたのだから、当たり前だ。それを言ってやると山ちゃんは愁傷に反論しない。だから、お前は、後悔しないタイプではないかと言ってやたら、基本的にはそうだが、大学時代一度だけ後悔した事がある、と言うので、今日はそのエピソードを聞いてやった。

 それは山ちゃんが大学1年のクリスマスの頃の話だ。
 サークルでクリスマス会があった。初めての経験だった。音大のサークルだったので、15名程度の部員に先生一人、男子部員は3名だった。
 事前に各自300円程度のプレゼントを用意するように言われていた。当時そんな事疎かった1年生だった山ちゃんは、一人っ子だったし、彼女もいなかったし、その当時100円ショップもなかったしで、何にも用意していなかった。
 当日、絶対用意してという先輩の言葉で、山ちゃんアパートに戻って、プレゼントになるような物を探した。(だって山ちゃんは今まで、かわいい店に行った事がなかったのだ)唯一あったのが牛乳石鹸だった。それはおしゃれな石鹸ではない。紙箱に入った石鹸1個を適当な紙に包みなおして大学へ持って行った。
 クリスマス会は、みんなが輪になって歌を歌いながらプレゼントを回して歌い終わった時点で持っていたプレゼントをもらう、というシステムだった。しつこいが、1年生の山ちゃんは初めての経験だった。
 幸い、プレゼントはいったん集められた。そして、適当に配られ、歌が始まった。プレゼントは一つ1つ隣に移動する。当然、山ちゃんはどれが自分のプレゼントかは一目瞭然だ。だって、15人しかいないし、プレゼント包装もダサいし。
で、ある同級生の手元でプレゼントは止まった。
ここからは、山ちゃんは鮮明に映像のように脳裏に焼き付いている、と言っている。
周りは楽しい雰囲気でみんな笑顔だった。当然山ちゃんのプレゼントを受け取った同級生の女子も笑っていた。そこへ先輩の一言「は〜い、みんな開けてみましょう。」げ〜、どうしよう。おお、神よ!
クリスマスなのに神は救ってくれなかった。
 山ちゃんのプレゼントを受け取ったその娘は、嬉しそうに包装を開けると、表情を曇らせてそのまま包装をし直してその石鹸をポケットにおさめた。
その曇った顔が今でも夢に出るそうである。ただ、その顔は進化して同級生の顔でなくなって、いろいろなモンスターになって現れてくるのだそうだ。
(ルナ)山ちゃんお前、地獄へ落ちろ!
(山ちゃん)だから後悔しているって言っただろう。
(ルナ)
スイスの講習会はそれ以来の後悔だったらしいから、贖罪のつもりでちゃんと講習会の事を話せよ。