日本人同期生W夫妻の話


(ルナピンスキーとライヴィッチも夫婦だよ)
 山ちゃんと同期にデトモルト音楽大学に入った日本人にW夫妻がいた。ご夫妻ともピアノ専攻で同じ教授に師事していた。二人が自転車で仲良くサイクリングをしているのをよく見かけた。山ちゃんは旦那に伴奏をしてもらった縁で、よくいろいろな話をしたそうだ。中学からピアノを始めて日本の一流音楽大学にいったという話が一番印象的であったようだ。でも何よりも思い出があるのは・・・・・
 ある日山ちゃんが、楽しかったスペイン旅行の話をW氏にしたら、彼も旅行が好きだと言って、二人で夏にトルコ、ギリシャを旅しようという話になったそうだ。
 ところが、その数日後彼が「行けなくなった!」と謝りにやって来た。その理由は、奥さんが懐妊したのだそうだ。奥さんが心細いと言っているらしかった。山ちゃんはお祝いの言葉を伝えた。さて、どうするかだ。山ちゃんはトルコはもともと意中になかった。また一人でギリシャ、イタリアでも行こうと考えていた。そして、買い物のついでにオレンジを一袋3個入りを買ってW夫妻の部屋を尋ねたが、留守だったので『おめでとうございます。お身体に気をつけてください』というメッセージを添えたオレンジをドアノブに掛けて帰った。
 次の日である。W氏が山ちゃんの部屋に飛び込んで来た。なんと奥さんが、1週間なら旅行に行っていいと言ったそうだ。それで、奥さんの気が変わらないうちにすぐ行こう、という話になった。結局、山ちゃんはオレンジ3個で、W氏と一緒にトルコ・ギリシャ旅行へ出かける事になったのだ。