デトモルトにウナギのかば焼きがやってきた。


(かば焼きってこんなになっているのかなあ)
 ある日デトモルトの日本人の留学生の間でこんな話が広まった。「ある日本人が、今度かば焼きを持ってデトモルトへ来るらしい。ただしキリスト教の集会に参加した人だけ食べる事が出来るのだそうだ。」
ドイツにもウナギはあった。だが大ぶりで燻製になっていて、およそ日本の蒲焼とは別の代物だった。だから日本人留学生は日本の味の代表であるかば焼きに飢えていたのだった。問題はその会が『ウナギを食べる会』ではなく、キリスト教の集会である事だった。だから多くのキリスト教信者でない日本人留学生たちは心に葛藤を感じたはずだった。「信者でないのにどうしようか・・・」と。だから日本人全員が喜んで参加したわけではなかった。それでも当日は約50人位いた日本人のうち20人位その『ウナギの会』に、否
『キリストの会』に参加した。当然山ちゃんも参加したそうだ。山ちゃんは信者ではない。「ちょっと節操がないのではないか〜?」とルナピンスキーが言うと
山ちゃんは「僕はキリスト教音楽大学を出たから、 資格があるんだよ。」と言い訳をしていた。
 デトモルトにウナギのかば焼きを持って来た日本人は、初老の日本人伝道師だった。話によると、若い頃ヒヨコの性別鑑定士としてノルウェーに渡って成功したそうだ。そこでかば焼きと羊羹を作ってヨーロッパ各地をキリストの伝道師として周っているそうだ。
日曜の午前中に始まったキリスト教集会はお昼にかば焼きが出ると大いに盛り上がったそうだ。各自お土産に羊羹を持って散会したそうだ。ちなみに山ちゃんはその後毎週日曜日に行われた、かば焼きの無いキリスト教集会に3ヶ月くらい参加したそうだ。(それって、一番中途半端な小心者じゃないか〜?ルナ)