パンプローナでの寄り道


(気まぐれなのはスペイン人だけではないニャ)
 山ちゃんたち一行もいよいよ帰途の列車に乗る事になった。スペインのマドリッド経由パリ経由でデトモルトへ向かうのだ。でもフランス国境に近い北部スペインのバスク地方へ寄り道することになっている。
実は山ちゃんと同期の声楽の女学生がスペインのパンプローナという街の出身だった。彼女はマリアといい入学当時ドイツ語が上手くなく、山ちゃんと一緒に外国人のためのドイツ語学校に通った仲であった。スペイン旅行前にそのマリアとたまたま会って旅の事を話した。すると彼女は電話番号と住所を教えてくれ、春休みは実家にいるから来たら会おうと約束してくれたのだ。パンプローナは山ちゃんの故郷の姉妹都市でもあり、彼女に会うために寄り道をしたのだった。
 パンプローナは市民参加の勇壮な『牛追い祭り』で有名だが、その日は別にイベントも無く、街の雰囲気もスペイン南部の都市のような華やかさも無かった。マリアの実家へは電話しても言葉がわからないので、直接実家へ向かう事にした。その実家は街中の格調ある大きな古いアパートの一室だった。そこで応答してくれたのはマリアのお姉さんだった。もちろんスペイン語しか通じない。そこでフランス語が話せるHさんの出番だ。彼女は四苦八苦しながら状況を聞いてくれた。結果、マリアはまだ帰っておらず、まだしばらくは帰らないだろうという事だった。そうだった。ラテン民族はその日の夜の約束もしないそうだ。だって夕方までに素敵な人と出会ってデートできるかもしれないからだ。と聞いた事がある。ましてや、ただの同期生の日本人が春休み来るからって、約束を守って待っている訳がないではないか!そうなんだ彼女はカルメンの血を継いでいるスペイン女性だった。山ちゃん一行は少しがっかりしながらその日のうちにパリ行きの夜行列車に乗って翌朝パリに到着し、その日の夕方デトモルトへ向かう夜行列車に乗って帰ったのだった。