山ちゃんはストリートミュージシャン!


(ルナピンスキーはストリートウォーカーよ❤)
 山ちゃんはドイツでちょっとしたおこずかい稼ぎを
していた。もともとは車を持っていた日本人留学生先輩の誘いで始めた事だった。
 山ちゃんたちはデトモルトから車で約1時間くらいのちょっとした町へ出かけた。ドイツでバートという冠が付く地名は温泉町だ。そこには保養施設があって
町の通りにはたくさんのお年寄りが散策していたそうだ。その人通りの多いちょっとした場所で山ちゃんはフルートを組み立てる。先輩はヴィオラをケースから取り出してそのケースを開けた状態で前に置いておく。そしてこれが肝心なのだが小銭を少し入れておく。さあ準備は整った。演奏開始である。曲はモーツァルトのオペラやシューベルトの歌曲が好評だ。山ちゃんたちの前を通って行くお年寄りたちがニコニコしながら小銭をケースの中へ入れてくれた。1時間くらい演奏しただけで2,3万円程度は稼げたそうだ。
小銭は二人で山分けだ。きっと山ちゃんは寮へ戻って机にその日の収穫である小銭を小高く積み上げてニタニタしていたのだろう。山ちゃんはその先輩とそれからもあちこちの町に出かけながらおこずかい稼ぎをしたそうだ。
 それに味をしめた山ちゃんはペルー人やポーランド人のヴァイオリン学生と一緒にストリートミュージックに出かけたのであるが芳しい結果にはならなかった。上手すぎたのが原因だった。ペルー人の友人は上手で日頃よく二重奏をして遊んでいた。それを演奏したのだ。確かにみんなが立ち止まって聴き入ってくれていた。拍手喝さいだった。それがいけなかったのだ。人が立ち止まって動かないという事はその人数分以下しか小銭が動かないという事を学んだのだった。