山ちゃんの日本食のすすめ(その2)


(ん〜?何か匂うぞ〜!ルナ)
 デトモルトでの自炊生活は、日本での生活とそれほど変わらない。日本での学生生活では昼はほとんど弁当だったので、昼も自炊していたデトモルトの方がむしろ充実した日本食生活を送っていたと言えた。洋食が嫌いだったわけではない。山ちゃんが昔からほとんど日本食ばかり食べていたので洋食を知らなかっただけなのだ。
 もちろん完全に日本食の食材が手に入るわけないが白菜やキャベツ、人参等普通に買えたので何の問題もなかった。しいて言うと、もやしが1袋150円位した事と鶏肉が日本より高かった位だった。そのかわり牛肉が安く豚肉もそれ以上に安かった。牛肉は日本にあるような薄切りはなかったので、すき焼きをする時は肉屋さんに行って「紙のように薄く切って!」と注文する。肉屋の親父さんは「スキヤキだね。」と言って得意顔でスライスしてくれるのだが、まだまだ厚いのだ。「もっと薄く!」と2、3回要求すると、親父さんはだんだん不機嫌になってきた。無理もない。大変な作業をしてもたかだか1キロ2000円程度なものだ。ドイツ人だったら1キロ分10回程度包丁を入れば簡単に済む。そして値段は同じだ。
 寒い時期の楽しみはムール貝だ。日本では3個くらい皿に乗ったオードブルが2000円するのだろうか?それが、袋いっぱい30個位入って500円程度だった。しかも調理は簡単だ。深鍋に白ワインか赤ワインを3分の1程度入れムール貝を鍋いっぱいに入れ、お好みでバターやオリーブ油やニンニクを入れ、あとは蓋をしてさっとゆで、時間をかけ蒸しあげるだけだ。そのままムール貝の殻をトゥングみたいにして貝から身をつまみだしてどんどん食べていくのだ。今思い出しても最高なひと時だった、と山ちゃんは言っている。そしてそのムール貝にまで山ちゃんは日本食にしてしまった。山ちゃんはワインの代わりに水と味噌を使った。余った汁は翌朝の味噌汁になった。これもまた至福の時であった。