山ちゃん、ドイツで過ごす初めてのクリスマス


(クリスマスといえばこれでしょう)
 ドイツでは12月に入ると街中がクリスマス一色になる。とはいえ、日本のクリスマスのようにきらびやかで商業戦線の気配はしない。教会には立派な馬小屋でのキリスト誕生像が飾られる他、街中や他の建物の中や家庭の中でも目にするようになる。夜になるとイルミネーションが美しく輝く。
 ドイツは戦後の荒廃した街の復興を、市庁舎や教会のある広場を中とした街作りから再建したので、どんなに大きな街でも古い街並み(アルト・シュタット)が残っている。そうなのだ、ドイツでは新しい物よりも古い物を大事にする。だから特に古い建物だとその建物に年号が記されている。そのような街並みにイルミネーションが輝いているのだから本当に神聖な輝きに感じられた。それは、デトモルトのような田舎町でも同様だった。町の中心の小さな広場にある小さな市庁舎や教会。その広場からクモの巣のように広がる通りの中で一番広い通りは歩行者天国だ。それはどの町でもある風景であり、あとはそれが大きいか小さいかの違いだけだ。田舎者の山ちゃんにとってデトモルトの大きさはとっても居心地がよかった。当然クリスマスのイルミネーションも心地いい輝きだった。山ちゃんは時々夜の町へ出てイルミネーションを見ながらホクホクに焼いたジャガイモのバターのせをかぶりつき、アツアツのグリュー・ワインを飲むのが楽しみだった。グリュー・ワインとは、赤ワインに香辛料や柑橘系を混ぜてアツアツに温めたもので、寒い冬に外で過ごすのに欠かせない飲み物だった。
 ドイツがクリスマスの雰囲気に変わった12月になってすぐに、山ちゃんの寮でビックリするような事があった。